眼科医が知っておきたい抗がん剤に伴う副作用について

眼科雑誌「あたらしい眼科」1月号より気になった記事を簡単にご紹介

 抗がん剤の作用は、細胞増殖の阻害・抑制であるため、増殖の盛んな組織、毛髪、皮膚、血球系に副作用を生じやすい。 角膜や涙点、涙小管の上皮は細胞増殖の盛んな組織のため、抗がん剤の影響を最も受けやすい組織である。主な副作用は、角膜障害と涙道障害であるが、日本で最も多く処方されている内服抗がん剤のSー1(ティーエスワン)はこの両方をきたす代表薬剤である。     

 

角膜障害の治療 

抗がん剤による角膜障害を認めた場合は、抗がん剤の変更や中止が望ましいが、休薬できないことも多い。その場合は防腐剤無添加人工涙液を頻回投与して涙液中の抗がん剤濃度を下げる。 

涙道障害 の治療

角膜障害と治療は同様であるが、涙道閉鎖は不可逆性変化であり、いったん閉塞すれば抗がん剤の中止や点眼薬加療で再開通することはない。そのため、閉塞前に予防的涙管チューブを挿入することが推奨されている。 閉塞した場合には涙道再建術が必要であり、より高度な手術が必要なため、専門病院への紹介となる。 

 涙道閉塞は放置すると生涯流涙に悩まされることになり、quality of lifeやquality of visionに大きく影響する。涙道が閉塞する前からの治療が必要なので、流涙症状が出現したら、早急に眼科受診するように他科への周知も必要である。 



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